認知神経科学【自閉症者は障害ではなく人類に不可欠な自然探究者】京都大学霊長類研究所教授正高信男氏

認知神経科学を専門とする、京都大学霊長類研究所教授の正高信男氏が「自閉症者が人類社会に「不可欠」である理由 〜実は障害ではない!」という文章を書いている。

自閉症は他の遺伝的障害に比較し、不自然に高率で存在

自閉症スペクトラムの実態は、

(1)対人関係とりわけコミュニケーションが不得手で、

(2)興味・関心の幅が著しく限られていたり、こだわりが激しいという二点を特徴とする。

自閉症スペクトラムという「障害」は遺伝的要因によって生ずると考えるのが定説となっており、発症率はどんなに少なく見積もっても1~2%。25人に1人(4%)と主張する研究者もいる。

ところが通常の遺伝的要因による障害は1万分の1とか、2万分の1。(0.01%~0.005%)

自閉症者は「自然」に,一般人は「社会」に関心のウエイトがある

いわゆる自閉症スペクトラムという「障害」は、存在意義があるからこそ、このような高率で存在している。

自閉症者は他人のこころがわからないとか、共感能力に欠けるという「障害」であると考えられているが、実はただ単に向ける関心が違うだけだ。

いわゆる自閉症者は「自然」に、そうでない一般人は「社会」に関心のウエイトを置いている。

「ウォーリーを探せ」を動物でやると自閉症児がダントツで早い

小学生に『ウオーリーをさがせ』のような課題で、自閉症児は著しく劣る。

ところが、トンボがいっぱい描かれている中に一匹のクモを見つけるような課題を行うと、自閉症児がダントツのスピードで発見してしまう。

数理的な思考や生物に非常な関心を示し、学校でもすぐれた成績をのこすことからもうかがえる自閉症者のスタンスと、そうでない人のスタンスのいずれが欠けたとしても、人類の今日の繁栄はなかったのかもしれない。

ニホンザルの近縁であるアカゲザルの群れでも、集団外の脅威にもっぱら注意を払うサルと、仲間同士の社会的交流の調整にエネルギーを注ぐサルがいて、しかもサルがどちらの役割をはたすかは遺伝的にきまっている(専門的には遺伝的多型があるという)ことが報告されているが、人間にもこうした特徴はうけつがれているらしい。

いわゆる「自閉症」は自然界を探究する担当

つまり、いわゆる「自閉症」とされている人たちは「自然界のなかで自分たちがどう生きていくかに思いをめぐらす」担当の遺伝子を受け継ぎ、

「集団・社会内で互いの利益を調整し、どう上手くやっていくかに思いをめぐらす」担当の人たちが「一般人」なのである。

「ナチュラリストとしての才覚」にたけていた存在と、「社交にたけた存在」が相補的に機能することが、人類の地球上での生活圏の拡大に多大の貢献をはたしたと考えられる。

生物多様性(バイオダイバーシテイ)のように、脳神経システムの多様性を「ニューロダイバーシテイ」という。

多数派の「健常者」が、少数派の自然探究担当のいわゆる「自閉症」を迫害してきた。

定型脳を保持するいわゆる「健常者」が多数派を占め、

自分たちにのみ都合の良い状態へ生活環境を変えてきたというのが,今日の先進国社会の状況にほかならない。

多数決社会では当然そうなる。

たとえば聴覚ひとつとっても、自閉症者は非常に音に敏感である。それはかつては外界のほんのちょっとした不穏な動きにも反応するためにきわめて有用な感性であったと推測される。

だが人工音が巨大な音量で氾濫する現在の日本の都会のような所では、ただただイライラさせられるばかりで、ついついキレやすくなる。

音に敏感な彼らは、

世の東西を問わず、封建制が崩れ土地との結びつきから解放されだした際、まず生活を移動しはじめたのが音楽的パフォーマンスをなりわいとする人々であったのは、決して偶然ではない。

遊芸人(英語のwondering minstrel、ドイツ語のSpielmann、アフリカ圏のgriot)は定住民とつきあうことを好まず、彼らに蔑まれつつコミュニテイから排除される形で、放浪をくりかえしたが、この時代から定型脳を保持する「健常者」による「自閉症者」への迫害は激化しだしたのだった。

いわゆるジプシーたちですね。

色彩感覚を調べてみても自閉症児のそれは、「健常児」の子どもとはかなり異なることが明らかとなった。いちばん明るい色である黄が嫌われ,代わりに自然環境を彩る地味な緑と茶が好まれる。

ところが昨今の「健常者」が多数派の人工環境の景観では華美な原色が多用されるのは周知のとおりである。それはマイノリテイの「自閉症」人間にとって自覚するしないにかかわらず、相当量のストレスとして働いている。

そうしてストレスに耐えられない、キレやすい「障害」と診断され、精神薬を処方され、脳をマヒさせられる。

地球環境を守るためには、人類が生物多様性(バイオダイバーシテイ)を保全する努力が不可欠であるように、脳神経システムの多様性(ニューロダイバーシテイ)を守る努力が求められている。

同じ牛丼チェーン店の外装、左が京都。

(う~ん。私も京都の方が落ち着いてて、ずっと好きかも・・・都会にいると疲れるのよね~^^;)

京都市は古都という事情から、独自の景観条例をつくり、華美すぎると判断される店舗の外装を規制しており、その一環として黄色の使用も極力ひかえるように指導しているのであるが、結果としてそれは自閉症者の色彩感覚に適した環境作りにもつながっている可能性が高いのである。

やる気さえあれば工夫次第で、環境改善はいくらでも可能である

正高信男氏の研究によると、多数派の「健常者」から、「他人のこころがわからないとか、共感能力に欠ける」という「障害」であると診断され、治療すべきであるとされる「自閉症者」は、ただ単に「自然に関心が高く」自然を探究する遺伝子を受け注ぐ、人類の自然科学の発展に大いに寄与する貴重な人々なのである。

京都大学霊長類研究所教授正高信男氏の【自閉症者は自然探究者】「このような研究をすることで、どのように社会に還元されていくのですか?

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