ネタばれ注意!(映画を見た後お読みになることをおすすめします)
先日、宮崎駿監督の最新作【君たちはどう生きるか?】を見てきた。
前評判で意味がわかりにくいとは聞いていたが、私なりに読み解いたので、なぜ「君たちはどう生きるか?」なのか説明したい。
主人公の眞人(まひと)はエグイほどの大豪邸に住んでいる
オープニングは主人公の眞人(まひと)(高学年小学生)の戦時中の東京の家から始まる。
この家に注目して欲しい。
すごい豪邸である!
宮崎駿監督は、なぜこんなにもイヤミなほどの大豪邸に主人公の少年を住まわせる設定にしたのか?
今までのような宮崎アニメのファンタジーを描きたいならこのようなエグイ大豪邸に主人公の少年を住まわせる必要はない。
そこにはもちろん意味がある。
早々に眞人(まひと)は空襲でお母さんを火事で亡くしてしまう。
そして父親の田舎の別荘に移り住む
その別荘もまたお手伝いさんのばあやがたくさんいるエグイほどの大豪邸である。
新しい田舎の小学校に転校したとき、お父さんは当時ほとんど誰も持っていない車でこれ見よがしに校庭に眞人と乗りつける。
田舎の一般家庭(貧しい?)の子供たちにいじめられ、お父さんは当時の大金である300円を学校に寄付し、お金で何でも解決しようとする。
実にエグイのである(笑)
なぜ大金持ちになったのか?
眞人の大叔父の敷地にかつて、変わった隕石が落ちる。
映画ではそれが異世界に通じるポータルとして描かれている。
大叔父はそれを塔で覆い、幽霊塔として、人を近づけないようにして、その秘密を一族で独占する。
そして大叔父は「13個の石」でこの世を操作できることに気付く。
しかし、その石には悪意があった。
眞人の父親は戦闘機のキャノピー(操縦席の風防)を作っている会社を経営している。
要するに軍需産業の社長であり、いわゆる死の商人なのであった。
なるほど、これでエグイほどの金持ちぶりの理由がわかった。
この軍需産業は悪意のある石(意思)でこの世に影響を与えた大叔父が創業したのだろう。
そしてこの悪意のある石(意思)で、短期間に大金持ちになりあがった。
眞人の母親は、オープニング早々に火事で死ぬ。大叔父の代から悪意ある石(意思)でこの世に影響を与え、よりによって死の商人になることによって大金持ちになった因果応報を受けてことだろう。
「13個の石」(意思)でこの世に影響を与える力を手にしたのなら、大叔父は何も死の商人になることはなかった。
しかし「13個の石」(意思)には悪意があったため、そのような世界を創造してしまった。
そしてその悪意のためにその大叔父の創造したこの世はまもなく滅びるのだという。
眞人(まひと)に次の世界を託す
大叔父の石(意思)には悪意があったため、戦争のある世界を創造してしまい、人々は殺しあうが自分は膨大な資産を築ける世界にしてしまった。しかしその世界はまもなく滅びる。
大叔父は自分の過ちに気付いた。
だから眞人のために「悪意のない」13個の石を用意する。
そしてどうか自分のあとを継いで、この「悪意のない石(意思)」を使ってよりよい世界を作って欲しいと託す。
しかし、眞人は学校の帰りにいじめられた後、自分で石(意思)を手に持って、わざと自分の頭を大きく傷つけ、血を流した。
いじめた生徒たちもある程度手加減をしていたのだろうが、それでは足りないというのだろうか。
そして、父親に「いじめられたのか?」という問いに、「転んだだけだ」と答える。
父親の同情を引きたいのなら、「そうだ。いじめられてこんなにひどい怪我をしたんだ。」と言えばいい。
しかし、眞人は一見いじめた生徒たちをかばうようなことを言う。
眞人はおそらく、自分が「転んだだけだ」と言っても、自分のひどい怪我見た父親は、学校の生徒たちにいじめられたと思うに違いない、と読んでいたのだろう。ひどく怪我をすれば、学校に行かなくてもすむという読みもあったのかもしれない。事実そうなった。
異世界で大叔父に「悪意のない石(意思)」を使ってよりよい世界を作って欲しいといわれた時、眞人は自分の頭の傷を指して、「この傷は自分でつけました。僕の悪意の印です」言う。自分にはその資格がないと。
しかし、眞人は13個の石(意思)を受け取って、世界を創造する前に、自分の中には悪意があると認めた。
その彼なら、「悪意のない」13個の石(意思)で新しい悪意のない世界を作るのことができるのではないか。
大叔父の世代、父親の世代では、悪意ある石(意思)を使って悪びれもせず軍需産業を興し、死の商人として大金持ちになって、我が世の春を謳歌した。
しかし、そのやり方では世界がもたない。
もう限界に達した。
悪意のある石(意思)を使った大叔父や父親の血を受け継ぐ、眞人がいつのまにか悪意を身に着けていたとして、それは仕方のないことだ。
その世界に生まれて、その世界で成長するしか眞人に選択肢はなかった。
しかし、今は違う。
大叔父が苦労して「悪意のない13個の石(意思)」を用意してくれた。
眞人よ。
どうかそれを受け取って、悪意のない世界を作ってくれ。
なぜ主人公の少年の名前は眞人(まひと)なのか?
大叔父や父、すなわち私たちの世代は、他者の命を顧みず、自分の利益を追求する悪意ある人だった。
私たちは真の人間ではなかった。
どうか眞人(まひと)には眞(まこと)の人になってもらいたい。
そう願っての眞人(まひと)だろう。
私たちは、永続する世界を作れなかった。
それは私たちの意志に悪意が含まれていたからだ。
君たちはどう生きるか?
それがこの映画の意味だろう。