原発事故発生時、放射線障害の予防のため原発付近の住民などにヨウ素が配布されている。
それは「原子力規制委員会の安定ヨウ素剤の配布・服用に関する解説書」の19ページに書いてあるように、
「放射性ヨウ素が体内に取り込まれると、甲状腺に集積し、それが放出する放射線によって 数年~数十年後に甲状腺癌を発症する可能性がある。」からである。
原発事故が発生したら先に汚染されていないヨウ素を体に入れてしまい、放射能に汚染されたヨウ素が体内に入っても、もうお腹いっぱいだからと、そのまま排出されることによって健康被害を防ぐためだ。内部被爆が悪いことは原子力規制委員会もよく知っている。
一度口に入ってもすぐ出れば健康被害はないが、蓄積するとずっとそこから放射能を出すから悪いのだ。その内部被爆を防ぐのがヨウ素剤の目的である。
よく自然界にも放射能はあるからこの程度の放射能は問題ないという議論がある。
自然界の放射能の大半がカリウム40だ。
市川定夫氏(埼玉大学名誉教授 農学博士)によると
カリウムは「窒素、リン酸、カリ」というように、肥料の三大要素であり、植物は体内に大量に取り込むが、カリウムを体内に蓄積する植物はおろか、動物、微生物は一切いないという。カリウムは取り込んだら100%排出される。体の一部として決して利用しないのだ。
だから原発事故が起こっても先に「カリウム剤」を飲む必要はない。
要するに進化の過程で、放射性物質を含む可能性があるカリウムを体内に蓄積すると、生命の進化にとって非常に不利になるか、カリウムを蓄積する生命はすでに絶滅してしまったため、植物はおろか動物、微生物にも一切カリウムを蓄積する生物はいないのだ。
ところが放射能を出すセシウムは今まで地球に存在しなかった。
原発事故などによって地球上の生命は、初めて放射性セシウムを経験したのだ。
セシウムはカルシウムと同族であるから、人間を含む生命に取り込まれ利用される。
だからセシウムはカルシウムのように、微生物に取り込まれ、小魚に取り込まれ大型魚に取り込まれ、人間に取り込まれ生物濃縮されていくのである。
自然界にも放射能は存在するが、その自然界の放射性物質を蓄積し体内で利用する生命は一切存在しない。
「天然の放射能に濃縮するものはないというのは適応の結果なんです。ところが、我々が進化と適応の過程で一回も遭遇したことがない、原子力が始まってから初めて出来たものに対して、我々はそういった適応を持っていないんです。」(市川定夫氏)
放射線量を測って、この程度は自然界にある量と比べて問題になる量ではないという議論がよく行われているが、
自然界に元からあるのはあらゆる生命に蓄積しない放射性物質だ。
その放射線がカリウム40由来のものであれば問題ないだろうが、セシウムなど生命の蓄積する放射性物質を地球上の生命は経験したことがない。
自然界にある放射性物質を体内に取り込み蓄積する生命は、植物、動物、微生物にいたるまで一切存在しない。
体内に放射性物質を取り込んだ生命はすべて絶滅してきたのである。
それが自然界の教えるところだ。