私の愛する日本のマスター白隠。
私の大好きな彼の逸話をもうひとつ紹介したい。
ある時、ある侍が彼を訪ねてきた。
侍は常に刀を腰にさげ、いざ戦となれば命を惜しまず出陣する。
それが侍だ。
彼らは常に生死を意識する。
腰の刀が彼らに常にそれを意識させる。
その侍は当時から知られていた白隠に教えを乞いにわざわざやってきた。
(侍)「天国にはどのようにしたら行けるのでしょう。地獄はどうなったら行くのですか?」
(白隠)「お前は誰か?」
(侍)「私は侍です。侍大将です。」
(白隠)「お前が侍大将か!お前は物乞いに見えるぞ。」
(侍)「貴様っ!俺をバカにするのか。許せん切ってやる!」
侍は瞬時に刀を抜き、白隠に切りかかるべく構えた。
(白隠)「これが地獄への行き方だ」
「その怒り、その刀、その自尊心(エゴ)によって地獄が生じる。」
侍はハッとして我に返り気づいた。(これが地獄なのか)
彼はすぐに刀を鞘に納めてひれ伏した。
(侍)「よくわかりました。ありがとうございます。」
(白隠)(その気づきとエゴのなさ)「これが天国への行き方だ。」
侍はしばらく身動きができなかった。
白隠は「お前が侍大将か!お前は物乞いに見えるぞ。」と人をおちょくっただけのように見えた。
しかし彼はそれによって侍の問い、
「天国にはどのようにしたら行けるのでしょう。地獄はどうなったら行くのですか?」に見事に答えた。
しびれるぜ!白隠
もちろん本当は天国も地獄もなく、それは私たちが作り出す現実のことだが、それがどう地獄になり、どう天国になるのかその作用を彼は一瞬で悟らせた。