オードリー・ヘップバーンが世界に知られるようになったきっかけになった「ローマの休日」は1953年の作品であり、今は著作権が切れておりYouTubeで全編無料で見られる。
ローマの休日 part1
ローマの休日 part2
まだ終戦から10年程度のイタリアは当時の日本同様貧しい、戦勝国のアメリカンニュース社の記者であるグレゴリー・ペックはパリッとしているね。
ローマの街に飛び出した当初、表情が硬かったオードリ・ヘップバーンは
トレビの泉で長い髪を短くカットした後から、表情が生き生きしてくる。
グレゴリー・ペックは脱走した王女オードリ・ヘップバーンの特ダネ記事をものにするため、1日中オードリ・ヘップバーンをローマに連れまわす。
編集長と大きい賭けをして、記事をものにすれば大儲だ。
しかし、最後にはグレゴリー・ペックはオードリー・ヘップバーンとの思い出を大切にし、記事にすることをやめてしまう。
この映画にはキスシーン以上は登場しない。
そして、見えないもののために、大きな儲けを棒に振り、口にすることさえやめてしまう。
超有名人の美人の王女と1日デートしてキスまでしたというのは、男にとって大変な自慢で、みんなに触れ回りたいに違いない。
しかし、そういう金や名誉(自慢)よりも、見えないこと、何の現世的な価値も生まないこと、ただひとり胸に秘めるだけなのに、それら以上に価値があるものがあることを示したのが、この映画のいいところ。
最後の王女の記者会見で、グレゴリーペックは
「私自身の(通信社の)見解を述べますと、王女様の信頼は裏切られないでしょう。」と述べた。
part2の50分付近から始まる、この王女の記者会見、グレゴリー・ペックがいることに気づいてからのオードリー・ペップバーンの表情が素晴らしい。
二度とあうことのないふたりは記者会見という制約の中で、せいいっぱいお互いの思いを伝えあう。
王女は記者との異例の挨拶に臨みます。
オードリ・ペップバーンは、各国語で実に上手に挨拶する。
こういう知性や気品を表現させたら、オードリー・ペップバーンの右に出るものはない。
そしてグレゴリー・ペックに挨拶する時だけは、「So happy Mr.Bradley」と名前で呼びかけ「とても幸せだった」と伝えている。
最後に振り返って最高の笑顔で記者を端から端へ見渡し、もう一度グレゴリーペックのところに視線を戻した。輝く気品あふれる笑顔で美しくも離別の悲しみを抑えた表情は、
モーツアルトの「疾走する悲しみ」と表現される美しい旋律を思い出させる。
「魅力的な唇のためには、優しい言葉を紡ぐこと。
(For attractive lips, speak words of kindness.)
愛らしい瞳のためには、人の美点を見つけること。
(For lovely eyes, seek out the good in people.)」
とはオードリー・ヘップバーンの言葉だ。
彼女の美しさは内面に由来する。