イラゴ峠の巡礼宿(アルベルゲ)の朝の風景。
朝8時ころ宿年配のセニョール(男性)と若いセニョーラ(女性)が私たちの部屋にやって来て、一緒にヨガをしないか言う。
ヨガ?!
巡礼宿で?
こんな山小屋で?
目が点になっていると、
いかにもインド、ヨガみたいな音楽がかかりセニョールとセニョーラ、そして同室の若い女性が、ぐるぐるとスキップしながら体を手足をぶらぶらさせ、ウォーミングアップを始めた。
セニョールの動作は、まるでタコ躍りだ。
これなら簡単だ!
気がついたら、私もセニョールの後ろについて、一緒にタコ躍りをしながら、部屋の中をぐるぐる回っていた。
私の後ろにはセニョーラは、スペインのフラメンコよろしく、華麗に回転しながら、私に迫ってくる。
私は追いまくられるように必死で、タコ躍りを続けながら、時々見よう見まねでくるくる回転すると、いいぞ!いいそ!と手拍子するので、私も調子にのってタコ躍り+回転技を繰り返しながら、セニョーラに追いまくられるように走り続けた。
息が切れる。
30分はこんなことをしていただろうか。
ようやく奇妙な回転木馬はストップし、使い古したヨガマットを出してならべ、さまざまなポーズをし始めた。
股を大きく広げて前傾し、「テイク ディープ ブレス」(息を深くすって)
「ゆっくり吐いて」みたいな指示にしたがいながら、体をねじったり、反ったりを繰り返す。目をつぶって内面に平和を感じて!これがヨガた!みたいなセニョールの言葉に従いながら、瞑想したり、オ~と音を出しながらゆっくり息をはいたりしている。
何で俺は巡礼中の山小屋でこんなことをしているのかっ!
時々我に帰ったが、一所懸命やっているセニョールとセニョーラを見ていると、「もう出発しなければ!」と言い出すことができず、最後までヨガの修行に付き合った。
小屋で用意してくれた遅い朝食を食べたらもう昼前くらいになっていた。
出発する時、セニョーラは2本の指で自分のほほをなぞり、「OH~」と涙を流すしぐさをした。
そして大きく腕を広げて私をハグし、右のほほにキスしてくれた。
キ、キスですかっ!
私はどうすればいいのか?!
私もセニョーラにキスをしないといけないのか?!
教えてスペイン人!
熱いぜセニョーラ。
今度は私もちゃんとかっこよくキスすることにしよう!(自信なし)
(だって人前でキスとかしたことないんだもん!)
峠越えと長い長い下りをひたすら歩き、ようやく集落についた。
もう乾燥した砂で靴もズボンのすそも真っ白だ。
お昼は集落のバルで、オムレツのサンドイッチを食べた。
つい誘惑に負けカーニャ(生ビール)も飲んでしまった・・・
集落を抜けて下り続ける。
モリナセカは街中を川が流れるかわいい街だ。
スペイン人は木陰で食事をしたり、寝そべったりしながら、ほんと楽しそうに遊んでいる。
出発が大いに遅れ夜8時頃になったが、ポンフェラーダに到着した。
ここのアルベルゲ(巡礼宿)はなんと無償だ。
すべてボランティアで成り立っている。
私もいくばくか寄付をしてありがたく泊めていただいた。