2017年7月7日に国連で核兵器禁止条約が、会議参加国124か国中、賛成122か国、反対1か国、棄権1か国の賛成多数で採択された。
核兵器の製造や配備、実験、移譲が禁止され、こうした活動を支援、奨励する行為も禁止された、加えて「使用による威嚇」も禁止された。
今後は50か国批准した90日後に、国際条約として発効する。
7月7日の国連での採択後、広島で被爆したサーロー節子さんが演説を行った。
その演説が素晴らしい。
各国代表・NGOの仲間・親愛なる友人のみなさま
私はこの瞬間を見届けることができるとは夢にも思いませんでした。
私はこの条約交渉に知性と情熱を注いでくださった皆様の素晴らしい仕事と献身に感謝したいと思います。
ホワイト議長のリーダーシップに国連事務局、各国代表、NGOの皆様の核兵器廃絶という目標に大きく近づくことに対する献身的な取り組みに感謝します。
私たちはこうして集い、この驚異的な達成を祝っていますが、少しの間1945年8月に広島と長崎で亡くなった原爆犠牲者たちに思いをはせませんか。その後72年間に亡くなった数十万人の人たちに。
彼らはみなそれぞれに名前を持っていました。
そしてみな誰かに愛されていました。
私はこの日を70年以上待ち続けていました。
そしてその日がとうとう訪れたこには望外の喜びです。
これは核兵器の終わりの始まりです。
2014年われわれの多くが一堂に会したメキシコのナヤリットでのことを私は覚えています。
議長はこう言いました。
「もう引き返せないところにいるのだ」と。
私たちは失敗した核抑止政策に逆戻りはしません。
私たちは人間にとって必要のない核兵器に資金を提供することに逆戻りしません。
私たちは取り返しのつかない環境汚染に逆戻りしません。
私たちは未来を生きる世代の命を危険にさらし続けることはしません。
世界中の指導者のみなさん、私はあなたに懇願します。
あなたがこの惑星を愛しているなら、この条約に署名してください。
核兵器はこれまでずっと道徳に反するものでした。
そして今では法律にも反するものです。
一緒に世界を変えて行きましょう。
サーロー節子(中村節子)さんは、広島に原爆が投下された1945年8月6日、爆心地にほど近い、広島女学院に通う13歳の少女だった。
授業は行われておらず、同級生の多くは空襲後の防火帯をつくる作業にあたっていた。
彼女は成績優秀者30名くらいが集められた一員として、広島駅近くの北西側にあった第二総軍司令部で暗号解読作業に従事していた。
「そんな重大な情報に13歳の女子生徒をあたらせるくらいですから、日本がどれほど絶望的な状態にあったかがよくわかります。」と彼女は語っている。
暗号解読の訓練を終え、8月6日は彼女の正規の暗号解読助手としての第一日目だった。
建物の二階で暗号作戦の責任者が「元気で、天皇陛下のために一生懸命に働くよう」訓示し、「わかりました。最善を尽くします」と言った時、原爆がさく裂した。
彼女は崩れた建物の下敷きになり、真っ暗ななか身動きもとれず「このまま死ぬんだな」と思った。しかし暗い中で「いいか、あきらめるな。押し続けるんだ。動かし続けるんだ。いま助けるから。見える? 陽の光が差しているだろ。動くんだ。隙間から這い出るんだ!」という男子の声が聞こえる。
その声に励まされ、ようやく外に這い出た時には、建物に火が回り始めていた。
「私が着ていた服はぼろぼろになり、血に染まっていました。体中、傷だらけでしたが、手足を失うことはありませんでした。」
この後の彼女が目撃した、この世の地獄は(沈黙の閃光/ セツコ・サーロー)に詳しい。
彼女は奇跡的に生き残った。
頭もよかったのだろう。
英語もすっかりマスターした。
そして2017年7月7日の国連での核兵器禁止条約締結後、見事な演説を行った。
(朝日新聞)
核兵器禁止条約採決の様子
(採決は20分前後から)
この議長のコスタリカのホワイト(Elayne Whyte)さんも知的で素晴らしい。
そして、この会議では本当に女性がよく活躍している。
一体誰がこんな素晴らしいことを主導してきたのかとwikipediaで調べてみた。
(wikipediaではこの「核兵器禁止条約」の項目が削除されようとしていますので早めにご覧になってください。)
1996年以降
INESAP(拡散に反対する国際科学技術者ネットワーク)
IALANA(国際反核法律家協会)
IPPNW(核戦争防止国際医師会議)
の3グループによって20年に渡って起草作業が続けられてきたそう。
こういう報道もされない人々が、自分の善意のみに従って地道な作業を続けて来てくださった。
こういうことをする人たちが地球の最良の人々だ。
そして会議参加国124か国中、賛成122か国が賛成し、立ち上がって拍手した。
だから地球の大半の人たちは最良の人々だ。
そして不参加なのは核を保有する5大国を中心とするわずかな国だけだ。
国連加盟国は196か国。
196名が住む町があったとして、そのうち数名程度が鉄砲を持っていて自らの交渉の立場が有利になるからと手放さないのと同じだ。
全員が一斉に鉄砲を持つのをやめようと言っているのに何が問題があるのか。
これらの国々は世界で最も豊かな国であるのに、それでも誰かに鉄砲を突き付けて脅し、自らの立場を有利にする卑劣なやり方をやめようとしない。
日本は自ら被爆国であるにも関わらず、ジャイアンに従って核兵器禁止条約に参加さえしない。
外務省は核兵器禁止条約の日本語訳さえ作らない。
政治家は政治を私物化して、嘘をついては自分の仲間だけが儲かるように口ききをし、日本が再び戦争できるように、憲法を変えようとしている。
こういう自分の利益しか考えない政治家たちが、地球を破壊してきた。
安倍政権は、2016年3月18日に「憲法9条は一切の核兵器の保有および使用をおよそ禁止しているわけではない」と閣議決定している。
しかし、いまだに核兵器がものごとを解決すると思っている頭のおかしい人たちは、地球上では本当にごくわずかだ。
この核兵器禁止条約を作り上げてきた女性たちや、それに賛成にする124か国中122か国の人々のように、世界に住む大半の人はきわめてまともである。
日本国憲法の前文には「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」と書いてあるではないか。
このような核兵器禁止条約を主導することは、国際社会において大変に名誉あることである。
核兵器禁止条約に不参加なのは、被爆国であり、このような憲法をもつ国の国民として本当に恥ずかしい。
核兵器禁止条約の条文を20年前から起草してきた人々、これを国連に共同提案したコスタリカ・マレーシア、国連での採択に尽力したコスタリカのホワイト議長、これらを支えてきたサーロー節子さんやNGOなど多くの人たち、そしてこれに賛成した地球上の大半の国々の人たち、彼らは正気であり国際社会における本当に名誉ある人びとだ。
もし地球に未来があるとしたら、こういう人たちのおかげだ。